松くい虫防除対策
松くい虫被害とは
- 松くい虫被害は、正式には「マツ材線虫病」といい、体長2~3cm程度のマツノマダラカミキリ(以下、「カミキリ」という。)が松枯れの原因となる体長1mmにも満たない大量のマツノザイセンチュウを体の中に入れてマツに運ぶことによって広がる伝染病です。
- マツ材線虫病への感染や夏期の高温少雨等により衰弱したマツにカミキリが卵を産み付け、翌年以降に大量のマツノザイセンチュウを体の中に入れたカミキリの成虫が羽化脱出し、また衰弱したマツに卵を産み付けるというサイクルを繰り返すことで、被害が拡大していきます。
- 松くい虫被害の拡大を防ぐためには、1.マツが枯れないようにする予防(薬剤散布等)と、2.枯れたマツの中にいるカミキリの幼虫の駆除(伐倒破砕等)を組み合わせた対策が必要です。
(参考リンク)
〇マツ材線虫病にどう対処するか―防除対策の考え方と実践―(外部サイトへリンク)
編集・発行:森林総合研究所東北支所
発行日:2022年3月
〇林野庁松くい虫被害(外部サイトへリンク)
更新日:令和6年9月20日
庄内地域の被害状況
- 山形県では、1978年(昭和53年)に初めて確認されました。庄内地域では1979年(昭和54年)から発生し、増減を繰り返しましたが、令和5年度の民有林における被害量は、過去最大となりました。
〇庄内地域の被害量の推移(PDF:245KB)
庄内地域の取り組み状況
- 庄内地域で確認された昭和54年以降継続的に防除対策を行なってきましたが、平成26年度には過去最大の被害量となってしまいました。
- そこで、被害減少に向けた効果的な防除対策を円滑に進めるため、平成27年度に「庄内海岸林松くい虫被害対策強化プロジェクト会議」を発足し、国、県、関係市町及び地域の松林保全団体等と連携を図りながら、地域一丸となった被害対策に取り組んでいます。
- 防除対策は、被害木の伐倒駆除と、予防措置として薬剤散布(地上散布、無人ヘリ散布等)を実施しています。
- 伐倒駆除した被害材は、約8割をパルプ、ペレット原料、発電用燃料として有効活用(残りの枝葉は現地破砕)しています。
- 山形県森林研究研修センターにおいて、マツノザイセンチュウに対し抵抗性のあるクロマツ種苗の開発・供給に向けた取り組みを行っており、令和4年以降の抵抗性クロマツの苗木供給率は100%となっています。
- 令和5年度の過去最高の被害状況を受け、これまでの防除方針(被害木の全量駆除)を見直し、「クロマツの保全を行う区域」と「広葉樹への転換を進める区域」に区分する松くい虫被害対策の選択と集中について検討中です。
所有者へお願いしている予防方法
1.樹幹注入
- 冬期間に守りたいマツの樹幹に薬剤を注入し、マツノザイセンチュウの移動・増殖を抑止することでマツを守ります。1回の注入で6~7年間の予防効果があるとされます。ただし、感染してから薬剤を注入しても、症状が回復することはありませんので、注意が必要です。
- マツの大きさによって薬量と穴の数を変えますが、その量や数は使用する薬剤の種類によって異なりますので注意が必要です。使用方法を誤ると逆に枯れる事が有ります。
2.樹種転換
- 生きているマツを含めてマツを伐採し、マツ林内に生育している多様な広葉樹の活用や庄内海岸に適した広葉樹の植栽によりマツ以外の樹種への転換を図ります。
※樹幹注入の詳細や薬剤の入手方法については、最寄りの森林組合や林業事業体、造園事業者等にお問い合わせください。
二次被害の防止にかかる注意喚起とお願い
- 強風により枝が落下したり、幹が折れたり、根株ごと倒れたりすることがあるので、松くい虫の被害木には近づかないようにしてください。
- 松くい虫被害木を放置すると、枯死による枝折れ、倒木などの危険があります。特に住宅、小屋、農業用ハウス等の近くでは、倒木・落枝による破損や倒壊といった二次被害の恐れがあるため、森林所有者または管理者が速やかに対応くださるようお願いします。
- 民有林の管理は、本来、森林所有者が行いますが、庄内海岸林においては森林病害虫等防除法に基づき、被害のまん延を防止するため、県や市町が被害木の駆除を行なっており、近年の被害増加に伴い、被害木を全て駆除することが困難となっています。
- 被害把握のため、県や市町の調査で被害木にテープやナンバーをつけていますが、上記のとおりすべてが伐採されるわけではありません。
※二次被害防止の伐採等については、最寄りの森林組合や林業事業体、造園事業者等にお問い合わせください。